元ヤングケアラー・若者ケアラーの「はし」です。
18歳未満の子どもが家族などのケアを担っている人のことをヤングケアラーと言います。
ようやく、ヤングケアラーという言葉が、広く知れ渡ってきたと思っています。
ヤングケラーの詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事ヤングケアラーの定義とは?手伝いとの違いもわかりやすく解説します(内部リンク)
ヤングケラーの実態がわかってきたら、今度は、どのように支援をしていくのかということも重要な課題となってきます。
ヤングケアラー支援は、様々な方法がありますが、今回は、その一つであるピアサポートについて説明します。
ヤングケラー支援は、必ずしも、ヤングケラー撲滅だけを意味するわけではありません。
伴走型支援というものも重要なのです。ピアサポートも、伴走型支援の一つです。
この記事を見てわかること
- ヤングケアラーは、なぜ、孤立しがちなのか
- ピアサポート・伴走型支援は、なぜ、大切なのか
- 専門的支援が必要ないわけではないことについて
元当事者である私の経験をもとに述べてまいります。
ヤングケアラーは孤立しがち
ヤングケアラーは、大人のケアラーと比べて孤立しやすい存在と言えます。
- 大人ではなく、
- 友人などにおいてもケアについての理解を分かってくれる人がいないがために
- 自身の悩みを聞いてくれる人がいない、からです。
詳しく見ていきましょう。
まだ”大人”ではない
ヤングケアラーの年齢層は、18歳未満です。まだ、大人ではなく、子どもです。
当然ながら、心身ともに十分に発達しているとはいません。未熟です。
それ故、他の年代の人々(介護者)と比べて、ケアにおける問題や悩みなどを自分で処理することは難しいでしょう。
自分で処理できなければ、他人に頼るということになります。
しかし、ヤングケアラーの場合、他人に頼るということも難しい場合があり、泣き寝入りになる可能性も十分に考えられます。
例えば、相談窓口を整備しても、子どもの場合は、当然ながら、情報量も限られ、相談窓口までたどり着けない。
こうしたことから、ひいては、ヤングケアラーの心身がボロボロになってしまうかもしれません。
ヤングケアラーを支援するときは、大人のケアラーではないことを考慮する必要があります。
また、大人のケアラーは周りに多くいても、18歳未満の同年代のケアラーは、周りにほとんどいません。これに関連して、以下、述べていきます。
誰も状況をわかってくれない
ヤングケアラーの潜在性は、各種調査で確認されていますが、とはいえ、ヤングケアラーは少数派です。
それ故、学校の同級生の人々の中で、ケアの実態を理解してくれる人はほとんどいません。
また、学校の先生についても、あまり、ヤングケアラーに関する知識がないということも考えられます。
ヤングケアラーは少数派であるため、自身のケアの状況をわかってくれる人は、少ないと言わざるを得ません。
悩みや思いを吐き出せない
上に書いたことと関連しますが、周りにケアについて理解してくれる人が少ないため、ケアにおける悩みなどを話せずにいる当事者もいます。
困りごとや悩みごとは、理解ある人に話すだけで、自身が楽になるということがあります。
しかし、周りの友人の中で、ケアについて理解してくれる人はいないでしょう。
そのため、ヤングケアラーが孤立に陥ってしまうことも十分に考えられます。
ヤングケアラーが、安心して、自分の思いを話せる環境が必要なのです。
ここで、重要になるのがピアサポートです。
ピアサポートの大切さ
ヤングケアラーは、自分の悩みなどをなかなか話す機会がなく、孤立しがちであるということを述べてきました。
そこで重要なのが、ピアサポートです。聞きなれない言葉だと思いますので、言葉の解説からしていきます。
ピアサポートとは
ピアサポートの「ピア」は、英語のpeerです。「peer」は仲間という意味があります。
また、「support」(サポート)は支援という意味がありますので、ピアサポートは、仲間同士の助け合いといった意味となります。
また、ピアサポート活動をする人のことを、ピアサポーターといいます。
例えば
- がん
- 障害
- 依存症
といったピアサポートは有名で、団体もいくつかあります。
また、教育分野でもピアサポートが活用されます。私も、大学で、ピアサポート(バイト)に携わっていました。
ヤングケアラーに対しても、ピアサポートを活かすことができるのではないでしょうか。
ヤングケアラーにおけるピアサポート
ヤングケアラーに対してのピアサポートは、大きく2つの方法があると考えています。
- ヤングケアラー同士が交流する
- 元当事者がヤングケアラーの相談にのる
ヤングケアラー同士が交流する
まずは、前者・「ヤングケアラー同士が交流する」について。いわゆるサロンの整備です。
ヤングケアラー同士が交流するなどして、悩みの解決を図るもので、これは立派なピアサポートです。
こうしたことは、ヤングケアラー支援の先進国・イギリスで行われてきました。
「無知な人」がいないので、お互いに安心して交流したり話したりすることができます。
しかし、
- 斡旋をする人が必要
- 忙しいヤングケアラーは参加できない
といった課題もあります。
また、新型コロナウイルスが流行している時期に、ヤングケラーの人たちが集うということは至難でしょう。
ただ、「オンラインサロン」であれば、現実的かもしれません。
元当事者がヤングケアラーの相談にのる
次に、「元当事者がヤングケアラーの相談にのる」についてです。
元ヤングケアラーが現ヤングケアラーの相談にのるというものです。
お互いの年代差はあるかもしれませんが、これについても、ピアサポートと言ってよいでしょう。
ここで重要なのは、①ヤングケアラーについての理解がある「元当事者」が②気軽に相談にのるということです。
こうすることによって、悩みを話したい、相談をしたいというヤングケアラーが相談を受けるハードルが下がります。
オンラインも積極的に活用していくべきでしょう。
話しやすい環境を
上記2つのピアサポートの方法で共通する点は、ヤングケアラーが話しやすい環境つくっているということです。
ピアサポーターの存在意義はまさにそれで、話しやすい環境をつくるということです。
そうすることによって、相談をするハードルが下がるのです。
ヤングケアラーについて、近年、注目を集めており、自治体が相談窓口を整備するということもなされています。
こうした取り組みは重要なことですが、ヤングケアラーが相談しやすい窓口なのかということも考慮する必要があるでしょう。
ヤングケアラーを減らすことだけが支援ではない
ヤングケアラー支援と聞いて思い浮かべることは、ヤングケアラーを減らすことです。
確かに、ケアによって勉強などができない状況に鑑みると、ヤングケアラーを減らしていくこと(問題解決型支援)は必要です。
しかし、ヤングケアラーを減らしていくことだけがヤングケアラー支援ではありません。
いわゆる、伴走型支援というものも、立派なヤングケアラー支援です。
ヤングケアラーの孤立を防ぐと同時に心理的負担を減らす効果が期待できます。
ピアサポートも伴走型支援の一種です。
ヤングケアラーの中には、やむを得ずケアをしているわけではないという人も少なくありません。
ヤングケアラーの多様性を考慮し、問題解決型支援と同時に伴走型支援もなされるべきでしょう。
とはいえ、専門的な(問題解決型)支援も必要
ただし、ピアサポートだけが全てではありません。
ヤングケアラーが、切羽詰まった状況に直面し、自分の時間を全く取れなくなるとどうでしょうか。
ピアサポート云々よりも、一刻も早く自分のケア負担を減らしたいと考えるでしょう。
ヤングケアラーの中でも、比較的、ケア負担が少ない子どもならば、悩みを聞いてあげるだけで楽になってくれるかもしれません。
しかし、学校に行く時間もない、勉強をする時間もない、四六時中ケアに追われているなど、ケア負担が多いならば、まずは、ケア負担を少なくするということをせねばなりません。
それ故に、専門的な問題解決型支援というものを決して軽視してはなりません。
悩みを聞き、何より、専門的な支援へとつながる必要があります。
まとめ
ヤングケアラーは、孤立に陥りやすいといえます。
ピアサポート体制を構築し、ヤングケアラーが相談に乗りやすい環境をつくっていく必要があるでしょう。
ケアをする上での悩みを理解ある人に話すだけで、気が楽になることもあります。
ケア負担を軽減させる専門的な支援と同時に、ピアサポートといった伴走型支援というものも重要です。