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子ども・若者育成支援推進法で「ヤングケアラー」支援を明文化!ヤングケアラー支援法が成立!

ヤングケアラー支援法成立

元ヤングケアラー・若者ケアラーの「はし」です。

2024年6月5日に、改正子ども・若者育成支援推進法が成立しました。公布日と同時に、施行されます。

ヤングケアラーの支援強化が盛り込まれたのです。これまで、法律でヤングケアラーについて、明文化されていませんでしたので、ヤングケアラー支援において、大きな前進です。

マスコミの見出しなどでは、「ヤングケアラー支援法」という表記を見られますが、子ども・若者育成支援推進法にヤングケアラー支援強化を明文化したことから、「ヤングケラー支援法」といわれています。

子ども・若者育成支援推進法は、ヤングケアラーの定義や支援について、どのように触れられているのか、元当事者が解説いたします。

子ども・若者育成支援推進法とは

支援をする人と受ける人

まずは、子ども・若者育成支援推進法について、簡単に説明いたします。

子ども・若者育成支援推進法では、子ども・若者が社会生活を円滑に営むことができるようにするための支援等について、その基本理念や行政の責務・施策の基本となる事項を定めています。

いわゆる「理念法」と呼ばれる法律です。

インターネットで、法律文を読むことができます。詳しくは、こちらをご覧ください。

改正された箇所

改正子ども・若者育成支援推進法

今回の、改正子ども・若者育成支援推進法では、ヤングケアラー支援強化が明文化されました。

実際に、法律文を見て、どのように改正されたか確認をいたしましょう。

細かな文言の修正などもありますが、大幅に改正がなされたのは、第二条 七と第十五条です。

第二条 七

まずは、第二条 七 から引用して見ていきます。

改正前

修学及び就業のいずれもしていない子ども・若者その他の子ども・若者であって、社会生活を円滑に営む上での困難を有するものに対しては、その困難の内容及び程度に応じ、当該子ども・若者の意思を十分に尊重しつつ、必要な支援を行うこと。

改正後

修学及び就業のいずれもしていない子ども・若者、家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者その他の社会生活を円滑に営む上での困難を有する子ども・若者に対しては、その困難の内容及び程度に応じ、当該子ども・若者の意思を十分に尊重しつつ、必要な支援を行うこと。

改正された箇所を太字にしました。

それによりますと、ヤングケアラーの説明が加えられたということになります。

これまで、日本の法律では、ヤングケアラーの定義づけが行われていませんでしたので、非常に意義のある改正ということになります。

すなわち、子ども・若者育成支援推進法におけるヤングケアラーの定義は、「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」ということになります。

ヤングケアラーという文字は一切入っていませんが、こども家庭庁の説明などから、この定義はヤングケアラーのものであると考えて問題ないでしょう。

この定義については、後ほど、解説をいたします。

第十五条

少し長いのですが、第十五条についても、全文、引用いたします。

改正前

国及び地方公共団体の機関、公益社団法人及び公益財団法人、特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第二条第二項に規定する特定非営利活動法人その他の団体並びに学識経験者その他の者であって、教育、福祉、保健、医療、矯正、更生保護、雇用その他の子ども・若者育成支援に関連する分野の事務に従事するもの(以下「関係機関等」という。)は、修学及び就業のいずれもしていない子ども・若者その他の子ども・若者であって、社会生活を円滑に営む上での困難を有するものに対する次に掲げる支援(以下この章において単に「支援」という。)を行うよう努めるものとする。

一 社会生活を円滑に営むことができるようにするために、関係機関等の施設、子ども・若者の住居その他の適切な場所において、必要な相談、助言又は指導を行うこと。
二 医療及び療養を受けることを助けること。
三 生活環境を改善すること。
四 修学又は就業を助けること。
五 前号に掲げるもののほか、社会生活を営むために必要な知識技能の習得を助けること。
六 前各号に掲げるもののほか、社会生活を円滑に営むことができるようにするための援助を行うこと。

改正後

国及び地方公共団体の機関、公益社団法人及び公益財団法人、特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第二条第二項に規定する特定非営利活動法人その他の団体並びに学識経験者その他の者であって、教育、福祉、保健、医療、矯正、更生保護、雇用その他の子ども・若者育成支援に関連する分野の事務に従事するもの(以下「関係機関等」という。)は、修学及び就業のいずれもしていない子ども・若者、家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者その他の社会生活を円滑に営む上での困難を有する子ども・若者に対する次に掲げる支援(以下この章において単に「支援」という。)を行うよう努めるものとする。

一 社会生活を円滑に営むことができるようにするために、関係機関等の施設、子ども・若者の住居その他の適切な場所において、必要な相談、助言又は指導を行うこと。
二 医療及び療養を受けることを助けること。
三 生活環境を改善すること。
四 修学又は就業を助けること。
五 前号に掲げるもののほか、社会生活を営むために必要な知識技能の習得を助けること。
六 前各号に掲げるもののほか、社会生活を円滑に営むことができるようにするための援助を行うこと。

こちらも、改正された箇所を太字にしました。

第十五条では、行政や支援団体が努めるべき支援について定められています。

こちらにも、前述した、ヤングケアラーの説明が加えられました。

これをもって、ヤングケアラーの支援強化が明文化されたということになります。国や自治体等が支援に努める対象として明記することによって、より一層の支援へとつなげることが狙いです。

ヤングケアラーの定義について

車いすの人など

改正子ども・若者育成支援推進法は、日本の法律で、初めて、ヤングケアラーの定義づけが行われたという意味で、意義があります。

改めて、子ども・若者育成支援推進法が定めるヤングケアラーは、以下の通りです。

家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者

注目すべきは、年齢が明確にされていないことです。「子ども・若者」という表現にとどめられています。

その理由として、確かに、もともとの法律が、「子ども・若者」を対象とした法律であることも考えられます。

しかし、一番は、18歳以上になっても、介護・ケアが続く場合が少なくないため、18歳以上になっても、支援を滞ことのないようにするためでしょう。

私も、高校1年のときに病気の母をケアするようになり、ケアが終わったのは大学4年のときでした。

よくある定義に基づくと・・・

当サイトでは、主に、日本ケアラー連盟の定義をもとに、18歳未満の子どもがヤングケアラー18歳以上から概ね30歳までが若者ケアラーとして説明をしてきました。

また、ヤングアダルトケアラーについても、説明をしてきました。


参考記事(ヤングケアラー):「ヤングケアラーの定義とは?手伝いとの違いもわかりやすく解説します」(内部リンク)

参考記事(若者ケアラー):「若者ケアラーとは?仕事や就職活動とケアの両立が課題です」(内部リンク)

参考記事(ヤングアダルトケアラー):「ヤングアダルトケアラーとは?私の経験をもとに解説!」(内部リンク)


上述の定義に基づいて述べると、子ども・若者育成支援推進法の定義は、18歳未満のヤングケアラー、ならびに、概ね30歳までの若者ケアラーともに、しっかりと支援をしていこうということを定めているのです。

ヤングケアラーと若者ケアラーはともに支援をすべき対象ですが、その特徴は異なりますので、年齢をある程度定めておくことは必要だと、私は思います。

以上が私の考えではあるのですが、子ども・若者育成支援推進法は、あくまで、理念法です。

「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」の支援強化が明文化されること自体に、意義があるのです。

今後、支援が強化されていくのか

ハートと子ども

ヤングケアラー支援については、

  • 相談窓口の設置
  • 当事者同士のサロンの運営・支援
  • 家事代行の支援

など、様々な取り組みが、自治体を中心に行われてきています。

しかし、一方で、ヤングケアラー支援の取り組みの程度は、自治体間によって差が生じていることも事実です(こども家庭庁の調査で明らかになっています)。

そのため、ヤングケアラー支援を法律で明文化したということになります。

このように、ヤングケアラー支援に法的な根拠ができたということになりますがから、地域間での支援の差の解消につながることを期待したいと思います。

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