介護

ヤングケアラーの定義とは?手伝いとの違いもわかりやすく解説します

2021年9月14日

元・ヤングケアラーのはしと申します。

最近、新聞報道などを見ていると、「ヤングケアラー」という言葉を、たびたび、目にする・耳にすると思います。

しかし、ヤングケアラーの意味をしっかりと理解している方は、そんなに多くないのではないかと思います。

例えば、以下の事項は正しいか、考えてみてください。

  • ヤングケアラーって、「ヤング」だから20代とか30代の人のことでしょ?
  • ヤングケアラーは、病気や障害の人を介護する若い人のことでしょ?

実は、上記の2点、どちらとも誤り、もしくは、誤解を招く表現です。

そこで、当記事では、「そもそもヤングケアラーって何なの」ということを解説していきます。ヤングケアラーについて理解できると、上記の2点の誤りであることは一目瞭然だと思います。


この記事を見ると以下のことがわかります。

  • ヤングケアラーの定義。
  • ヤングケアラーの多様性。
  • 「ヤングケアラー=手伝い」ではないということ。

多くの方々に理解できるよう、できる限り、具体性をもって説明していきます。

私も、元・ヤングケアラーですが、今後、さらにヤングケアラーの存在が顕在化してくると思われます。ヤングケアラーについて正確に理解しましょう。

ヤングケアラーの定義

ヤングケアラーについては、日本ケアラー連盟が定義づけを行っています(ただし、法令上の定義はない)。日本ケアラー連盟は、ヤングケアラーについて以下のように定義しています。

家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている、18歳未満の子どものことです。ケアが必要な人は、主に、障がいや病気のある親や高齢の祖父母ですが、きょうだいや他の親族の場合もあります。

この定義に、当記事で述べることがすべて含まれています。

しかし、「んー、、、長いなあ、わからない !(^^)!」という方がいらっしゃるかと思います。

ということで、抜粋して見てまいりましょう。

ヤングケアラーの年齢層は?

まずは年齢に注目します。定義には、「(前略)18歳未満の子どものことです」と書かれています(強調は筆者)。ここで、ヤングケアラーの年齢は18歳未満であるということがわかりました。

ヤングケアラーの年齢層は18歳未満の子ども

ヤングケアラーには、「ヤング」という言葉がつくので、20代や30代の介護者だと思われた方がいらっしゃったとおもいますが、実は、そうではないのです(18歳から30歳くらいのケアラーは若者ケアラーといわれることがある)。

若者ケアラーとヤングケアラーの違い

小学生や中学生、高校生の一定数が、ヤングケアラーかもしれないのです。

なお、ヤングケアラーの意味がわかりにくいことから、ヤングケアラーのことを「子どもケアラー」と呼ばれることもあります。

ヤングケアラーはどんな人?

次に、ヤングケアラーは何をする人なのか、見てまいりましょう。

「ケアラー」というくらいだから、文字通り、身内を介護する子どものことだろうと思われる方が多いのではないでしょうか。

しかし、それだけではありません。

ヤングケアラーと一括りにされることが多いですが、ヤングケアラーには多様性があるのです。

ヤングケアラーのタイプ

例をあげます。

  • 病気や障害のある身内の世話、見守りをする。代わりに家事をする。
  • 親に代わり、幼い弟や妹を長時間にわたり世話をする。
  • 日本語が理解できない親に対して、通訳をする。
  • 家計の柱として、労働をして賃金を稼ぐ。

こうした18歳未満の子どもをヤングケアラーといいます。ただ、これらはあくまで例です。その他のことをしているヤングケアラーもいます。

ヤングケアラーは、介護をする子どもだけではない。ヤングケアラーには多様性がある。

「ケアラー=介護者」ではないことを覚えておいてください。

支援の方法も様々

ヤングケアラーといっても様々な背景があるならば、当然ながら、ヤングケアラーの当事者に対する支援の方法も様々になってきます

介護をしているヤングケアラーに対しては、介護保険制度や障害福祉サービスといった制度を、最初に、勧めると思いますが、介護をしていないヤングケアラーもいます。

そうしたヤングケアラーの方に対しても、しっかりと、支援の手を差し伸べなければならないのです。

ヤングケアラーは家の手伝いをする人?

さあ、最後です。「ヤングケアラー=手伝い」なのかどうかを確認しましょう。

この点は誤解される方が多い印象ですので、必ず理解してください。

上の定義を見ると、「 家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け(後略)」と書かれています(強調は筆者)。

「大人が担うようなケア責任」が何を意味するのかが重要ですが、これ、手伝いのような軽い行為ではないことは明らかです。

手伝いは、親など誰かの監督のもと、子どもが自主的に、自分の意志で行うことです。あくまで、手伝いとして子どもが行うことは、親が代わることも可能なのです。

しかし、ヤングケアラーは違います。ヤングケアラーは、自分の意思では決めることができない、もはや、やらなければならない状況に陥っている子どものことです。

「やらない」という選択肢は、一切ないのです。周りに代わりにやってくれる人が、もはや、存在しないのです。

親子

だから、大人が担うような責任を負うわけなのです。

例えば、家事をしなければならないヤングケアラーについて考えてみましょう。もちろん、彼は、他に家事をしてくれる人はいません。

しかし、家事を誰もしなかったら、家族構成員全員が、食べ物を食べられませんし、衛生的な住居に住むことはできません。一家の健康に影響がでてきると思われます。

そのため、ヤングケアラーが、一家の健康を守るという大きな責任を背負って、家事をするのです。

ヤングケアラーは、手伝いをしているわけではない。やらざるを得ない状況なのである。

しかし、何かモヤモヤした違和感を覚えませんでしょうか。そのモヤモヤは、以下のように総括できると思います。

手伝いとケアの線引きって、難しいよね…。

どこまでが手伝いで、どこからがケアになるのか、これは難しい問題です。

しかし、何もかもを手伝いとみなすことは非常に危険なのです。

また、身内を助けることは美徳である、という見方も危険です。

ヤングケアラー支援の必要性

最後に、ヤングケアラー支援の必要性をごく簡単に述べて、終わることにします。

ヤングケアラーが、大人の一般的なケアラーと大きく違うことがあります。それは、子どもは心身ともに大きく成長する時期であるということです。

そうした時期に、ケアに明け暮れることは、子どもの成長にとってマイナスです。

それゆえ、ヤングケアラーの支援が必要なのです。

しかし、そもそも、ヤングケアラーについての認識が社会で共有されていません。まずは、多くの人がヤングケアラーについて知ることが大切です。

私も、元・ヤングケアラーです。元当事者として、これから、当サイトで、ヤングケアラーについてわかりやすく発信していきます。

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