元・ヤングケアラーかつ若者ケアラーのはしです。
大学生4年の7月まで、親のケアをやってきました。大学生らしからぬ生活をしていました。
最近、ヤングケアラーという言葉をよく聞くようになりました。ヤングケアラーの問題は、いち早く、解決していかねばなりません。
では、若者ケアラーという言葉を聞いたことがあるでしょうか。
若者ケアラーは、ヤングケアラーより上の年代のケアラーのことを指します。
確かに、若者ケアラーの問題は、ヤングケアラーの問題と比べると、重要性は薄いように感じられます。
しかし、若者ケアラーに一切の支援をしないというのも、あってはならないと思います。
若者がどのような世代なのかを勘案したうえで、支援策を検討していく必要があります。
この記事を見てわかること
- 若者ケアラーとは何か
- 若者ケアラーの苦悩
- 若者ケアラーの支援策
時折、自身の経験も交えて、解説できたらと思っています。
ヤングケアラーの若者版が若者ケアラー!
最初に、若者ケアラーとはどういう人なのか、説明してまいります。ヤングケアラーとの違いを意識して説明しましょう。
若者ケアラーは、ヤングケアラー(子どもケアラー)の若者版といってよいでしょう。
日本ケアラー連盟は、ヤングケアラーについて以下のように定義づけています。
家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている、18歳未満の子どものことです。
18歳未満のケアラーがヤングケアラーです。
ヤングケアラーの定義とは?手伝いとの違いもわかりやすく解説します
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一方、若者ケアラーは、18歳から概ね30歳のケアラーのことを指します。
上の引用文の最後の「18歳未満の子ども」の部分を、「18歳から概ね30歳の人」と読み替えていただければと思います。
加えて、「大人が担うような」を「大きな」に読み替えてください(18歳以上は大人と捉えています)。若者ケアラーは、ヤングケアラー以上に大きなケア責任を引き受ける傾向にあります。
ヤングケアラーの若者版が、若者ケアラーというわけなのです。
そして、若者ケアラーは、大きく、以下の2つのタイプにわけることができます。
- ヤングケアラーが18歳になってもケアを継続している場合
- 18歳を過ぎてからケアを担う場合
ヤングケアラーが18歳になってもケアを継続している場合は、心身ともに疲弊をしている場合があります。
また、18歳を過ぎてからケアを担う場合は、初めてで戸惑うことも少なくないでしょう。
いずれにせよ、何らかの問題に直面する可能性は高いといえます。次に、詳しく見ていきます。
ここまでのまとめ
- ヤングケアラーは18歳未満のケアラー のこと
- 若者ケアラーは18歳~概ね30歳のケアラー のこと
- そのうち、18歳未満から継続している若者ケアラー もいれば
- 18歳以上になって初めてケアを担う若者ケアラー もいる
若者ケアラーが直面する問題
では、若者ケアラーの問題について見ていきます。
実は、ヤングケアラーについての研究や調査は進んでいるのですが、若者ケアラーについてはまだあまりなされていません。
したがって、ここでは、一般的に、たびたび、指摘されていることを述べます。
ヤングケアラーのみならず、若者ケアラーについても、様々な苦悩に直面している可能性があります。ここでは、以下の4つを取り上げます。
- 学業に集中できない
- 就職活動が十分にできない
- 仕事との両立が難しい
- 人生設計が狂う
若者におけるいくつかのライフステージを意識しています。詳しく見ていきます。
学業に集中できない
まずは、勉強・学業についてです。
これは、ヤングケアラーとも共通する問題ですが、ここでは、若者ケアラーに該当する高校3年生と大学生・専門学校生に焦点をあてます。
18歳の高校3年生は、年齢だけに注目すると若者ケアラーに分類されます。
生徒・学生の本分は学業です。
しかし、介護といったケアを担っていると、勉強に集中できません。勉強の時間を減らさざるを得ないかもしれません。
例えば、18歳の高校生でしたら、大学入試の勉強が十分にできないということが考えられるでしょう。
また、近くの大学の行かざるを得ず、自分の学びたい分野を学べないということもあり得ます。
大学生の本分こそ、勉強であることを強調したいと思います。高校とは異なり、大学は高等教育の場です。
しかしながら、やはり、ケアをしていたら、大学の勉強がおざなりになる場合があります。
また、専門学校生の場合、専門的な事柄を学ぶことになります。
多くの勉強量が必要なことが多いため、ケアは大きな負担になります。
私は、学業とケアの両立をうまくできました。しかし、両立ができなかったこともありました。それが、次の事柄です。
就職活動が十分にできない
高校、もしくは、大学・大学院・短大・専門学校卒業前には、就職活動をすることになります。
高校生の就職活動は、基本的には、学校斡旋であるため、ここでは、(短期)大学(院)、専門学校の就職に注目します。
就職は、人生において、一つの分岐点と言えます。そのための、就職活動(就活)は、重要です。
しかし、若者ケアラーの場合、ケアをするために多くの時間を割かねばならないので、就職活動を十分にできない場合があります。
就職活動を十分にできなければ、自身が希望した職種の仕事に就けないということも起こりかねません。
私の場合
実は、私は、就職活動を十分にできませんでした。親の病気がひどくなったのが、まさに、大学生が就職活動をする時期と重なったこともあります。
また、ケア(介護や家事)をしていたら、時間が限られるのも確かなのですが、どうも、就職活動を本格的にする気になれませんでした。親の体調も気がかりでしたので…。
また、勉強のしすぎで就活をする時間がなかったのではないかと、周りから指摘されたこともあります。
ただ、就活を十分にできなかった理由を、親に求める気はゆめゆめありませんし、かといって、後悔もしておりません。
仕事との両立が難しく介護離職
就職活動はうまくいったとしても、仕事を続けられるかという問題があります。
ケア負担が大きければ、ケアと仕事の両立ができず、介護離職ということになりかねません。
これは、若者ケアラーのみならず、全世代のケアラーにもあてはまる問題です。
ただ、若者ケアラーの場合、多くは、上司の下で働くということになるでしょう。
そのため、上司や組織の理解を得られず、仕事をやめたり転職したりといったケース(介護離職)が、少なからず存在すると思われます。
介護休業や有給休暇の制度もあります。活用をしたいところですが、雰囲気がそれを許さないといったこともあるかと思います。
ケアを前提とした人生設計
若者ケアラーの年代になると、人生の転機といえる結婚や子育てといったことを検討する時期となります。
しかし、ケアを行わなければならなければ、それを前提にそうしたことを考えねばなりません。
それ故、自分が思い描いていた人生設計が狂う、できない可能性もあります。
そもそも、ケアが忙しくて、結婚などは蚊帳の外の事柄となることも十分に考えられます。
若者ケアラーの支援策とは
では、若者ケアラーをどのように支援をしていけばよいのでしょうか。考えていきます。
ヤングケアラーと比べると重要性は低いように見えるが…
ヤングケアラーの問題は、迅速な対応・解決が必要です。
まだ、18歳未満の子どもであり、心身ともに十分に発達していないからです。まだ、自立をできる年代ではありません。
一方、若者ケアラーの場合、18歳~概ね30歳という年代となり、既に成人を迎えています。
それ故、ヤングケアラーの問題と比べると、若者ケアラーの問題は、さほど重要ではないように見えます。
しかしながら、若者ケアラーは、若者ならではの苦悩に陥っています。
何らかの支援を検討する必要があります。
ある程度は現行の制度で
とはいえ、ある程度は、現行の公的制度で対応できるかもしれません。
介護保険や障害福祉サービスを活用できると、介護の負担を減らせるでしょう。
仕事については、介護休業の制度を用いると、休むことも可能です(条件有)。
しかし、18歳以上になって初めてケアを担うという若者ケアラーは、こうした制度に精通しているのでしょうか。おそらく答えは、「否」でしょう。
孤立せぬように【伴走型支援】
ケア負担を減らすということも重要ですが、若者ケアラーにとって、さらに重要なのは伴走型支援ではないかと考えます。
若者ケアラーは、少なからず、一般的なケアラー以上に、悩みや苦悩といったものを抱えていると思われます。
しかし、相談する人がいなければ、悩みを抱え込み、孤立してしまうかもしれません。
悩みを抱えている場合、理解ある人に、話すだけで楽になるということもあります。
若者ケアラーという特殊性を考慮した相談体制を構築する必要があります。
ピアサポート活動の筆頭と言える、サロンの運営支援も必要でしょう。
若者ケアラーになった方へ
実際に、若者ケアラーになったら、最初に、何をすべきなのでしょうか?
私は、高校1年のときから、親をケアしてきているので、18歳未満のヤングケラーの頃から引き続き、ケアをしてきました。
それ故、私のような18歳未満からケアをしている若者ケアラーは、良かれ悪かれ、ある程度、ケアについての知識は身についています。
しかし、18歳以上から若者ケアラーになった場合は、戸惑われるかもしれません。
以下、突然ケアを担わねばならない、そうした若者ケアラーに向けて、記します。
要介護者については、地域包括支援センターに相談を
まず、やっておきたいことは、親といった介護(ケア)を必要とする人が、自身のケアを必要としているかどうかを見極めることです。
もし、要介護者が、ある程度、自立できるというようであれば、すぐに介護の体制に入る必要はありません。
また、公的制度を使うと、自分のケアはあまり必要ない状況もあるかと思います。
介護保険などの制度を積極的に利用してください。
しかし、そうした制度についての情報がわからないという方もいらっしゃるかと思います。
そこで、一度、地域包括支援センターや自治体の福祉部門に相談をしてみてください。
介護を必要とする方とも、今後の方針について、話しておきましょう。
自身のキャリアに関わることは、周囲の人に相談を
ケアを必要とする人のことではなく、自身のキャリアに関わることは、周囲の関係者の人と相談をしておいたほうがよいでしょう。
ただ、周囲の理解のなさに恐怖を抱くこともあるでしょう。
確かに、まだ、ヤングケアラー・若者ケアラーについて理解ある人は、多くありません。
しかし、ケアを行うことによって、自身のキャリアに支障が出る場合、周囲の関係者に相談することをおすすめします。
何らかの措置を取ってくれるかもしれないからです。
誰に相談する?
高校3年生→スクールソーシャルワーカー、担任の先生など
学生→キャリア(センター)の担当者など
職場→上司など
もしかしたら、中には、ケアについて理解をしてくれない人がいるかもしれません。
ただ、話さずに、抱え込んでしまうことよりは、ましだと思います。
決して、無理をしないようにしてください。
もし、誰にも相談できないようであれば、経験者たる私に一報いただいてもOKです(お問い合わせフォームよりお願いします)。基本的には、傾聴に徹します。
まとめ:相談を受けたら…
ヤングケアラーの問題は極めて深刻ですが、若者ケアラーも苦しんでいる場合があります。
こうしたケアラーは、自身の悩みを抱えている場合が多いですが、周囲に悩みを話すだけで楽になることもあります。
では、若者ケアラーから、相談を受けたらどのように受け止めたらよいのでしょうか。
基本的には、傾聴に徹すればよいです。
ケアには、多様性があるので、余計なことは言わないほうがよいです。
「大変だね」という言葉も、場合によっては、相手を傷つける可能性もあります。
今後、少子高齢化の進展によって、若者ケアラーも増えるかもしれません。
若者ケアラーについての理解を深めていただけたら、私にとってはこの上ない喜びです。