最近、注目を集めている海洋散骨。故人の遺骨をお墓に納めず、粉骨をして海に撒いてしまうというものです。
海洋散骨自体は、決して違法行為ではないのですが、一方で、守るべき法規やマナーが存在します。
そうした、海洋散骨についての体系的な知識を身に着けられる資格があります。
それが、「海洋散骨アドバイザー」です。一般社団法人日本海洋散骨協会が認定している資格です。
「海洋散骨アドバイザー」とはどのような資格なのか、資格を取得するメリットはあるのか、難易度はどれくらいなのか、等々を解説いたします。
それでは、詳しく見ていきましょう。
海洋散骨アドバイザーとは
「海洋散骨アドバイザー」は、一般社団法人日本海洋散骨協会が認定している資格となります。
「海洋散骨アドバイザー」について、詳しく見ていきましょう。
そもそも海洋散骨とは
まずは、そもそも、海洋散骨とは何か、ということから述べていく必要があるでしょう。
海洋散骨とは、故人の焼骨を粉骨して、海洋上に撒くことです。
最近は、お墓の継承問題もあり、お墓の形や埋葬方法が多様化しています。そうした中で、海洋散骨も注目を集めています。
「海洋散骨アドバイザー」の資格について
このように、海洋散骨が注目を集める中、「海洋散骨アドバイザー」資格の取得をする人も増えているようです。
「海洋散骨アドバイザー」とはどんな資格なのでしょうか。
「一般社団法人日本海洋散骨協会 認定海洋散骨アドバイザー規約」によると、「海洋散骨アドバイザー」の目的について、次のように説明されていました。
認定海洋散骨アドバイザーは、消費者に対して海洋散骨についてアドバイスすることをもって、節度をもった海洋散骨の実施及び海洋散骨の普及に努めることを目的とする。
消費者に海洋散骨をすすめて、海洋散骨を普及するための資格といえるでしょう。
ただし、上記のなかで、特に重要なことは、「節度をもった海洋散骨」です。
海洋散骨については、否定的な考えを持っている人も少なくありません。
そのため、節度をもった海洋散骨が実施される必要があることは言うまでもありません。関連法規を守ることはもちろん、マナーも守らねばなりません。
さもなければ、海洋散骨について、規制がなされる可能性があります。
消費者に海洋散骨をすすめて、海洋散骨を普及するためには、適正な海洋散骨の方法について理解をしておく必要があります。そのための資格が、「海洋散骨アドバイザー」です。
単に、海洋散骨をどんどん普及させていくのではなく、節度をもった海洋散骨を普及させるための資格です。
「海洋散骨アドバイザー」の内容
「海洋散骨アドバイザー」の試験範囲は、『海洋散骨アドバイザーテキスト』から出題されます。
このテキストは、以下の6つの章によって構成されています。
- 海洋散骨概論
- 海洋散骨と供養
- 海洋散骨に関する法律
- 海洋散骨に必要なマナーと知識
- 海洋散骨と環境
- 墓じまいと海洋散骨
各章のタイトルを見ると、試験内容がなんとなくわかってくるのではないでしょうか。
海洋散骨に関する基本的な知識はもちろん、海洋散骨を実施するうえで守るべき法律やマナーについても学ぶということになります。
なお、『海洋散骨アドバイザーテキスト』は、試験を受験する人しか入手できませんが、ほぼ同内容の一般書(『海へ還る 海洋散骨の手引き』)も出版されております(実際に、確認済みです)。
多額の受講料(受験料)を払わずに、とりあえず、内容について知りたいという方は、下記の文献を読んでみてください。
※執筆者についても、『海洋散骨アドバイザーテキスト』とほぼ同じです。
一般社団法人日本海洋散骨協会とは
「海洋散骨アドバイザー」の認定を行っているのが、一般社団法人日本海洋散骨協会です。
一般社団法人日本海洋散骨協会は、2014年12月に設立した、海洋散骨を請け負っている事業者による業界団体です。
「海洋散骨に関してのガイドラインを定め、これを遵守することにより、節度ある海洋散骨を通じて、ご遺族に安全かつ安心できる海洋散骨を提供」することを目的としています。
「日本海洋散骨協会ガイドライン」については、ホームページでもご覧いただけます。
海洋散骨に関する法律はありませんが、無法地帯にならぬよう、節度をもった海洋散骨が重要になります。ガイドラインを作成して、節度をもった海洋散骨を、事業者に奨励されているということになります。
【実際に資格を取得】資格取得までの流れ
さて、私は、実際に、一般社団法人日本海洋散骨協会の「海洋散骨アドバイザー」資格を取得いたしました。試験は、概ね2カ月に1回程度、実施されています。
資格取得までの流れを説明いたします。
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
申し込みと受講料(受験料)の振込
まずは、申し込みです。申し込みは、一般社団法人日本海洋散骨協会のホームページで受け付けております。
申し込みフォームに必要事項を入力して送信しますと、受講料(受験料)の振込に関するメールが届きます。
振込先を確認して、受講料(受験料)を、振り込みましょう。
受講料(受験料)は、11,000円(税込)です。
お振込み期限につきましては、試験開催日10日前までとなりますが、振込確認後に、テキストなどが送付されますので、可能な限り、早めに、振り込んでおくべきでしょう。
送付されるテキストで勉強
一般社団法人日本海洋散骨協会が、入金を確認しましたら、以下の通り、テキストや関係書類が送られてきます。
- テキスト
- ルールブック
- 事業者一覧資料
- 受講の流れ
- 当日試験画面について
テキストを読んで、しっかりと勉強をしましょう。内容については、先に述べた通りです。
また、試験についての案内も同封されておりましたので、試験までに確認をしておくようにしましょう。
入金が確認できましたら、当日の試験受検用URLがメールで送られてきます。くれぐれも、メールを削除しないように注意しましょう。
オンライン試験
「海洋散骨アドバイザー」の試験は、オンラインで実施されます。
指定の時間になりましたら、受験用URL(グーグルフォーム)にアクセスをして、試験を受験してください。スマホではなく、パソコンでアクセスするようにしましょう。
試験時間は30分で、選択式の問題が50問、出題されます。75点以上で合格となります。
試験監督のいないオンライン試験となりますが、当然ながら、カンニングは禁止です。
合否通知
合否の結果は、1ヵ月以内に郵送されてきます。私の場合は、1週間以内に、郵送がされてきました。
私の結果は、合格でした。
合格証書や会員証が送られてきますので、大切に保管をしておきましょう。
なお、会費はございませんので、ご安心ください。
私は、めでたく、「海洋散骨アドバイザー」に認定されました。皆さまも、ぜひ、「海洋散骨アドバイザー」を目指してみてください。
「海洋散骨アドバイザー」の難易度
試験内容の詳細については、述べることができませんが、難易度は、さほど高くはありません。
テキストをしっかりと読み込んでおけば、問題は、難なく、解くことが可能です。
ただ、個人的に、少しネックになったのが、海洋法規に関する事柄です。
海洋散骨を行ううえで、海洋法規を遵守することは当然のこととなります。
が、私は、法律について覚えることは苦手だったので、海洋法規について覚えることに、少し苦労しました。
反対に、海洋法規以外の内容については、すっと頭に入ってきました。
「海洋散骨アドバイザー」資格取得のメリット
「海洋散骨アドバイザー」資格取得のメリットを解説します。
メリットは大きく2つ、あります。
海洋散骨普及協力費を受け取れる
1つ目は、海洋散骨普及協力費についてです。
「海洋散骨アドバイザー」が、お客様を、一般社団法人日本海洋散骨協会に紹介をして、協会加盟事業者にて受託をした場合、海洋散骨普及協力費 3,000円/件を受け取ることができます。
販売促進物に名称やロゴマークを使える
営業目的の販売促進物に、「認定海洋散骨アドバイザー」という名称やロゴマークを使用することができます。
事業者が、海洋散骨についてPRをするときに、名称やロゴマークを使用すると効果的でしょう。
ただし、名称やロゴマークを使う場合は、事前に、「認定海洋散骨アドバイザー名称・ロゴ使用許可申請書」を協会に提出する必要があります。
主に、事業者に対するメリットが中心になってしまいます。
ただ、海洋散骨の意義や目的、方法などについて、体系的に学ぶことができることも、資格取得をする大きなメリットでしょう。
関係者だけでなく、私のような一般の方が資格取得をすることも、非常に意義のあることだと思います。
海洋散骨関連のその他の資格
海洋散骨関連の資格は、以下の通り、他にもございます。
- 海洋散骨シニアアドバイザー
- 海洋散骨プロデューサー
- 海洋散骨ディレクター(全国海洋散骨船協会認定)
それぞれ、見ていきます。
【上位資格】海洋散骨シニアアドバイザー
「海洋散骨アドバイザー」の上位資格「海洋散骨シニアアドバイザー」について説明します。こちらも、当然ながら、一般社団法人日本海洋散骨協会が認定しています。
海洋散骨アドバイザーの規約によりますと、「海洋散骨シニアアドバイザー」について、下記の通り、説明がありました。
海洋散骨シニアアドバイザーは、日本海洋散骨協会ガイドラインを理解したうえで、海洋散骨を希望している者に対して適切なアドバイスができる知識を習得していると、当協会が認めたものをいう。
認定海洋散骨アドバイザー規約より引用
なお、「海洋散骨シニアアドバイザー」は、年会費の支払いが必要です。
ちなみに、「海洋散骨アドバイザー」の説明は、以下の通りです。
海洋散骨アドバイザーは、日本海洋散骨協会ガイドラインを理解したうえで、海洋散骨について一般的なアドバイスができる知識を習得していると、当協会が認めたものをいう。
認定海洋散骨アドバイザー規約より引用
ほとんど一緒のように見えますが、言い回しが少し異なっています。
適切なアドバイス(シニアアドバイザー)か一般的なアドバイス(アドバイザー)か、というところがポイントとなってくるでしょう。
少し調べておりましたら、「海洋散骨プロデューサー」という上位資格があるという情報も出てきましたが、当該資格について、現時点で、ホームページ等に情報掲載はございません。
【全国海洋散骨船協会】海洋散骨ディレクター
海洋散骨ディレクターは、一般社団法人日本海洋散骨協会ではなく、一般社団法人全国海洋散骨船協会が認定しています。
一般社団法人日本海洋散骨協会とは全くの別団体です。
海洋散骨ディレクターについては、公式ホームページに、下記の通り、説明がなされていました。
海洋散骨ディレクターとは、海洋散骨を希望するお客様から海洋散骨を受注し、すべてをコーディネートする職業です。
全国海洋散骨船協会ホームページより引用
海洋散骨ディレクターは、船舶の種類や用途、運航や海域、安全・気象など海にまつわる法律やルールの知識を持ち、葬祭や葬送文化に対する正しい知識、法律や手続きを理解し、大切な方を失ったご遺族に対する心構えと接客応対を心得て、ご遺族と打ち合わせをしながら散骨をプランニングし施行する、海洋散骨に必要な知識と技能を持ったプロフェッショナルの証明です。
最後に
「海洋散骨アドバイザー」資格では、今、注目を集めている海洋散骨について、体系的に学ぶことができます。
今後、高齢化が進んでいくことに加えて、墓じまいを検討している人が増えていくことが予想されるため、海洋散骨がより活発になるかもしれません。
ただし、大切なことは、節度をもった海洋散骨です。
マナーやルールを無視した海洋散骨が行われてしまうと、海洋散骨に対する規制が強化されてしまう可能性があります。
そのため、事業者の方はもちろん、一般消費者も含めて、節度を持った海洋散骨とは何なのか、資格取得を通じて、しっかりと理解をしてもらいたいと思います。