生死・その他

海洋散骨とは何か?自分でできる?違法?詳しく解説します

2024年8月20日

海洋散骨とは

以前は、人が亡くなり、火葬がなされた後は、墓地に埋葬されるのが普通でしたが、近年は家族形態の変化などもあり、「海洋散骨」を望む人が増えてきています。

「海洋散骨」とは、その名の通り、海洋に故人の遺骨を撒いて供養することです。

一方で、

海洋散骨はよく聞くようになったけれど、あまり詳しいことはわからないなあ・・・

と思われる方も少なくないでしょう。

例えば、

  • そもそも、海洋散骨は、法律上問題がないのか
  • 海洋散骨を行う流れはどのようになっているのか 等々
  • 海洋散骨は自分だけで行うことができるのか
  • 海洋散骨にかかる費用はどのくらいなのか

様々な疑問があることでしょう。

そこで、当記事では、上記のような海洋散骨に関する基本的な事柄を、海洋散骨アドバイザーが解説してまいります。海洋散骨を希望される方やご遺族の方は、参考にしていただければと思います。

そもそも海洋散骨とは

海上の船

海洋散骨とは、火葬後、粉骨した故人の遺骨を、海洋に撒いて供養することです。

日本では、火葬された後、遺骨を墓地に埋葬することが普通でした。なお、墓地に遺骨を埋葬することが定着をしたのは、家制度が誕生した明治初期以降のことです。

しかしながら、近年は、家族形態の変化により、お墓の継承問題が生じているのも事実です。

そうした問題を解決する手段として、海洋散骨が注目を集めるようになってきました。

参考までに

節度をもった海洋散骨を推進している業界団体「日本海洋散骨協会」は、海洋散骨について次のように定義しています

「海洋散骨は、祭祀の目的をもって、故人を火葬したあとの焼骨を海洋上に散布することをいいます」

海洋散骨は違法ではない

海洋

粉骨した遺骨を海に撒くことに対して、違和感を覚える方も少なからずいらっしゃるでしょう。

そこで疑問になるのが、

海洋散骨は違法ではないの?違法ではないにせよ、グレー行為なのではないか・・・?

法律上問題があるか否かについて結論から先に申しますと、適切な手順を踏めば、海洋散骨は違法ではありません。

といいますのも、散骨については、「墓地・埋葬等に関する法律」(墓地埋葬法)が想定していない供養の方法ですので、規制が一切ないのです。

また、散骨はグレーな行為と言う人もいらっしゃるようですが、そもそも、法律がないですから、グレー行為でもありません。散骨は、法律上、全く持って問題ないのです。

ただし、重要なのは、適切な手順を踏むということです。

例えば、

  • 粉骨をせずに、そのまま遺骨を撒く(刑法190条 遺骨遺棄罪の問われる可能性が否定できない)
  • 海事法規を無視した海洋散骨を実施する

など、適切な手順を踏まなければ、法的責任を問われかねませんので、十分に注意する必要があります。

海洋散骨にはルールのみならず、マナーも守る必要があります。マナーを守らず海洋散骨を行ってしまうと、一般の人の宗教的感情を阻害し、海洋散骨の規制が強化されることも考えられます。節度をもった海洋散骨が重要です。

条例違反になる地域はあるので注意

また、海洋散骨やそれ以外の散骨を、条例で規制している地域があります

中には、全面的に、散骨を禁止している地域もあります。

そうした地域で、海洋散骨や散骨を行うと、条例違反となります。

当サイトでは、散骨を規制・禁止している自治体をまとめておりますので、散骨を検討されている方は、ご参照ください。

参考記事条例で散骨を禁止・規制をしている自治体とは【違法ではない】」(内部リンク)


また、神奈川県熱海市や神奈川県伊東市は、海洋散骨に関するガイドライン等をまとめています。

強制力はなく、主に事業者に対するガイドラインですが、熱海市や伊東市で海洋散骨を検討している方は、ガイドラインを確認しておくのもよいでしょう。

海洋散骨を自分だけで行うのは難しい

海上

海洋散骨自体は違法ではないと述べてきましたが、とはいえ、海洋散骨を実施するにあたったは、様々なルールやマナーを遵守する必要があります

それ故、自分だけで海洋散骨を行うことは難しいと言わざるをえません。

例えば、遺骨を粉骨すること。これは、他の人が見ても、骨とはわからないくらい(2mm以下)になるまで、粉骨をする必要があります。

これを自分で行うことはなかなか難しいと考えられます。

さらに、遺骨には、六価クロムが含まれていることがあるので、還元剤を用いて、六価クロムの無害化処置をする必要があります。

六価クロムは水に溶けやすい性質があるので、海洋散骨をするにあたって、六価クロムの無害化処置は必須です。こうしたことも考えると、素人にはハードルが高いでしょう。

関連記事散骨をするとき、遺骨に含まれる六価クロムの無害化処理をすべきなのか?」(内部リンク)

また、海洋散骨をする場合は、船で沖に出る必要があります(港や海水浴場などで散骨をすることはNG)。

それ故、船を運転できなければならないですし、遵守すべき海洋法規がいくつもあります。

そうしたことを考えても、個人で海洋散骨を行うことは、極めてハードルが高いと言わざるを得ません。

したがって、海洋散骨をする場合は、粉骨を含めて、業者に依頼をすることとなります。

山林などへの散骨は、粉骨を除いて、自分で行うことも可能です。詳しくはこちらをご覧ください。

海洋散骨の流れ

海上の船

では、ここで、海洋散骨の流れを簡単に確認することにいたしましょう。

業者によって、多少、海洋散骨の流れは異なりますが、概ね、以下ような流れで、海洋散骨は実施されます。

海洋散骨の流れ

  1. 相談・申込
  2. 遺骨の引き取り・粉骨
  3. 散骨

1. 相談・申し込み

まず、海洋散骨を申し込む前に、散骨をする場所やプランなどをしっかりと確認をしておくようにしましょう。

海洋散骨を営んでいる業者は数多くありますので、複数の業者から資料請求をして、慎重に業者を選ぶようにしましょう。

また、海洋散骨で後悔のないように、遺族からの理解を得ておいたり、手元供養の検討をしておいたりしましょう。

参考記事散骨で後悔しないためにできる4つのことを解説」(内部リンク)


海洋散骨をすることを決意したら、業者に相談・申し込みをするという流れとなります。

多くの業者は、細かい対応をしてくれることが多いですので、例えば、一部の遺骨を手元供養したいなどの希望がありましたら、伝えるようにしてください。

埋葬許可証など、書類が必要となりますので、対応をするようにしましょう。

2. 遺骨の引き取り・粉骨

申し込みが済んだら、遺骨を業者に預けます

業者が遺骨を引き取りに来てくれる場合が多いですが、遠方の場合は、遺骨を郵送するということとなります。持ち込み可能の業者もあります。

業者は、遺骨を引き取ったら、粉骨を行います。先に述べた通り、海洋散骨をする際、遺骨は、粉骨を行うとともに、六価クロムの無害化処置を施さねばなりません。

とりあえず粉骨だけしたい、山林に散骨をするため粉骨だけしたい、というニーズに応えてくれる業者もあります。

3. 散骨

遺骨を預けて、粉骨が終わったら、いよいよ海洋散骨です。

チャーター散骨・合同散骨の場合は、指定された港に集合をして、船に乗って、散骨をする海域へ移動します。その後、散骨を行って、大切な故人とお別れをすることとなります。

散骨以外の実施事項は、

  • 献花
  • 黙祷
  • 散骨をした場所を旋回

などとなります。業者によって、若干、違いがありますので、詳細は、海洋散骨を依頼した業者に確認をしてください。

参考記事散骨をするときの適切な服装とは?喪服はNG?」(内部リンク)

海洋散骨の主なプラン(種類)と費用

お花

下記の通り、海洋散骨には、大きく3つのプラン(種類)があります。

  • チャーター散骨
  • 合同散骨
  • 代行散骨

費用は、高い方から、チャーター散骨>合同散骨>代行散骨という順番になります。それぞれの相場は、下記の通りです。

海洋散骨の種類相場
チャーター散骨20万円~40万円
合同散骨10万円~20万円
代行散骨5万円~10万円

海洋散骨は、一般的なお墓への埋葬の費用と比べてても、安く抑えられます

一般的なお墓への埋葬の場合、お墓をたてる費用だけで約100万円、さらに、管理費用もかかってきます。

一方で、海洋散骨の場合は、チャーター散骨でも20万円~40万円が相場ですので、低コストで実施できます。

それぞれの散骨のプラン(種類)の詳細を見ていきます。

チャーター散骨

チャーター散骨は、船を丸々貸切って、海洋散骨を行う方法となります。

船に他の遺族はいませんので、心行くまでゆっくりと故人とお別れをすることができます。

また、様々な要望に柔軟に対応してくれるのも、チャーター散骨の特徴です。

一方で、3つの散骨の種類の中で費用は最も高く、相場は20万円~40万円となっています。

合同散骨

合同散骨は、複数の遺族が船に乗り込んで、海洋散骨を行う方法となります。

他の遺族がいるため、出航の日時など、個別の要望に対応してくれるのが難しくはなりますが、一方で、費用を安く抑えることができることが特徴となります。

相場は10万円~20万円となっています。

代行散骨

代行散骨は、遺骨を預けた業者が、遺族の代わりに、海洋散骨を行う方法となります。

体力的に船に乗るのが難しい、海からかなり離れた場所に住んでいるなど、様々な事情により船に乗って散骨をするのが難しい遺族がいることも事実です。

そうした遺族のために、業者が代わりに、遺骨を海に散骨をしてくれます。

費用は最も安く、相場は5万円~10万円となっています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。最後に、まとめです。

  • 海洋散骨は、粉骨した遺骨を、海に撒いて供養することで、家族形態の変化などにより、近年、注目を集めている。
  • 海洋散骨は、適切な手順を踏めば、違法行為でも、グレーな行為でもない。ただし、条例違反になる場合があるので注意が必要。
  • 海洋散骨には、チャーター散骨、合同散骨、代行散骨の3種類ある。

当記事を通じて、海洋散骨についても、少しでも理解が深まっていただけていたら幸甚です。


下記サイトでも、散骨について取り上げられていますので、ぜひ、ご覧ください。

みんなが選んだ終活」(外部リンク)

    -生死・その他