家事は、休みなく、毎日行わなければなりません。立派な仕事であるといってもよいかと思います。
しかし、家事をしても、賃金は発生しません。
それ故、家事をやっていても十分に評価されないことがあるのです。
とりわけ、女性が家事をやり、男性が外で仕事をするという価値観が、一部では現在も残っています。
当サイト管理人は、父子家庭の息子(母は他界)ですが、父は朝から夜まで仕事に行きますので、ほぼすべての家事を担当しています(まだ、未成年の弟もいるので…)。
私も、家事の多くを担っている方の気持ちがよくわかります。
そこで、家事をお金に換算してみましょう。いくらになるでしょうか。
家事の価値・経済的価値を確認していきたいと思います。
この記事を見てわかること
- なぜ、家事は下目に見られるか
- 家事をお金に換算してみるといくらになるか
- ”見えざる”家事の価値とは
簡便な計算で、家事をお金に換算できます。経済学的な知識をほとんど必要としませんので、最後までお付き合いください。
なぜ、家事はあまり評価されないのか
なぜ、家事は下目に見られるのか?なぜ、家事はあまり評価されないのか?
もしくは、なぜ、家事をやってもらって当然だと考える人がいるのか?
その理由は、家事は無償労働だからです。ボランティアなのです。
もっというと、家事は、ボランティア活動と同様、市場を通さないため、GDPの計算に算入されません。
したがって、家事をやってもお金にはならないということから、家事の重要性が理解されないことがあるのです。
ただし、一般的なボランティア活動とは異なり、家事の場合は毎日やらないといけません。嫌でもやらないといけません。
家事は一種の仕事として評価されるべきだと、私は考えます。
よって、家事は単なる”家事”ではなく、”家事労働”といってよいでしょう。
家事は女性がやるもの?
では、その家事は、家族のだれが担うのでしょうか。
家事を担うのは、やはり、女性である場合が多くなっています。
これは、国の統計によって裏付けられています。総務省の社会生活基本調査を見ます。
下の表は、1日に家事(調査項目では家事、介護・看護、育児、買い物)を行った時間を男女別に示しています。7日間平均となっています。
年 | 男性 | 女性 | 男女差 |
---|---|---|---|
平成8年 | 24分 | 3時間34分 | -3時間10分 |
平成28年 | 44分 | 3時間28分 | -2時間44分 |
平成8年と比べると平成28年は男性が家事をする時間は増えていますが、女性が多くの家事を担っていることは明らかです。
しかし、子育て世代の方ならば、女性の家事の時間が少なすぎると思われるでしょう。というのも、10歳から85歳以上の年代すべてが含まれているからです。
もしくは、逆に、男性も家事を行うべきという価値観が根付いてきているのではないかという意見もあるでしょう。
そこで、年代を絞ってみます。30歳から34歳の年代に限定しましょう。それ以外の条件は変えず、平成28年のデータをお示しします。
年 | 男性 | 女性 | 男女差 |
---|---|---|---|
平成28年 | 49分 | 4時間24分 | -3時間35分 |
やはり、女性が多くの家事を担っていることがわかります。
「男は仕事、女は家事」という考え方は古臭いと思っていましたが、依然として、女性の家事負担は非常に大きいのです。
なお、最新の調査結果(令和3年)については、令和4年9月ごろに公表される予定です。コロナ禍による変化に注目したいところです。
家事をお金に換算
家事は無償労働で、女性が多くを担っている傾向が明らかになりました。
仕事に行って賃金を稼ぐ男性は、女性が、お金にならない家事を行うことは当然だと思われるかもしれません。
では、家事の対価をお金と捉えて、家事をお金に換算してみるとどうなるでしょうか。
家事をやってもらって当然という考えは、おかしいということに気が付くかもしれません。
家事の時給・日給・年給はどうなるでしょうか。3つの方法で考えます。
家事の時間を外で働いているとみなして評価
第1に、無償労働である家事をしている時間を、外で有償労働に従事しているとみなして評価してみます。これは、機会費用法と呼ばれています。
機会費用とは
機会費用とは、あるものを得たり行ったりするために、失ったり諦めたりしなければならない価値のことです。
無償労働の家事を行うためには、外に出て職に就くということをあきらめなければなりません。
家事をすることによって、本来、外で労働をしていた価値を失っているのです。これが、機会費用です。
経済学的な回りくどい説明は、理解しなくて結構です。とりあえず、計算をしていきましょう。
ここでは、30~34歳の女性が家事をする時間を、外で働くとどうなるのかということ考えます。
無償労働である家事。その価値を見える化すると、家事にはかなり大きな価値があることがわかると思います。
念のため、他の方法でも、計算してみましょう。
家事を専門職の賃金で評価
次に、様々な家事を、それぞれ、同じような専門職に従事する人が受け取っている賃金で評価してみます。これは、代替費用法スペシャリストアプローチといいます。
家事は、社会生活基本調査の項目より、一般的な家事に加え、介護・看護、育児、買い物によって構成されるとします。
家事は、さらに細分化して、掃除・洗濯・料理の3つとすることにします。
それぞれの家事を、専門職にあてはめてみます。
最も近い専門職を、賃金構造基本統計調査の項目より選んでみました(買い物の専門職を選ぶのに大変苦戦しました…)。以下を参照ください。
- 家事
- 掃除→ビル・建物清掃員【平均時給:1204円】
- 洗濯→クリーニング職、洗張職【平均時給:1204円】
- 料理→飲食物調理従事者【平均時給:1374円】
- 介護・看護→介護職員(医療・福祉施設等)【平均時給:1462円】
- 育児→保育士【平均時給:1463円】
- 買い物→身の回り世話従事者【平均時給:1382円】
上の専門職と賃金は、全て、令和2年賃金構造基本統計調査を参照しています。この仮定をもとに計算していきます。
いかがでしょうか。家事を有償労働の専門職とみなしても、結構な価値があることがわかりました。
では、最後に、もう一つ、見ていきます。
家事を家事代行サービスの賃金で評価
先ほどは、家事を細分化しましたが、ここでは、家事を一括りにして考えます。家事を家事代行サービスの賃金で評価してみます。
全ての家事を家事代行サービスに任せるときの費用と考えても結構です。これは、代替費用法ジェネラリストアプローチという手法です。
他の2つの方法と比べると、やや、低い値がでてきましたが、それでも、家事は結構な価値があることがわかるかと思います。
家事の時間のデータの散らばり(分散)は、非常に大きいと想像されます。したがって、もっと家事をやっているという方も少なからずいらっしゃると思います。くれぐれも、その点にご留意ください。
まとめ:家事の価値とは?家事の対価は?
家事は大きな価値があります。では、多くの家事を担っている人に対して、皆様は、何ができるでしょうか?
家事は無償労働であるため、本来、賃金は発生しません。
しかしながら、簡便な方法で推計してみると、家事は経済的価値があることがわかりました。
したがって、一見、家事は価値が無いように見えますが、実は、大きな価値があるのです。
無償労働だからといって、家事を軽視することはあってはなりません。
では、家事を多く担っている人(とりわけ女性)に対して、どのような対価を与えることができるでしょうか。
例えば、
- 家事の価値に対してお金を払う
←家計が崩壊する可能性があるので、難しいでしょう。 - 家事に対して口出ししない。感謝の気持ちを伝える。
←料理などにいちいち愚痴を吐かれると嫌な気分になります。感謝の気持ちを伝えましょう。 - 家事を引き受ける
←家庭内で、上手く、家事を分担しましょう。
といったことが考えられます。
といっても、様々な家庭事情があるかと思います。
家事をあまりやらない人は、まず、自身の言動を改めることから始めてみてはいかがでしょうか。
家事に対して文句・愚痴を言っていないでしょうか?
もし、不満があれば、家事を引き受けてみてください。きっと、家事のありがたさがわかると思いますし、夫婦の家事分担につながると思います。
なお、家事には大きな価値があることを理由に、家事を多くになっている人が、それ以外の人に感謝を強要するということもおすすめしません。場合によっては、夫婦関係が崩れる可能性もあるので、その点は、ご注意ください。