私の母親は、骨肉腫(がん)でこの世を去りました。母が亡くなった後、弔問で家に来られた近所の方や母の友人は、母について、そろって、次のようなことを発していました。
「ずっと、病気(がん)のことを隠していた」と。
確かに、母は、骨肉腫となり、足に障害がありました。
周囲も、母が障害があることは認識していました。しかし、その障がいが、がんが原因であることは、ほとんど誰も知らなかったのです。
母親は、周囲に心配をかけたくない人だったので、約6年間も、友人にもがんであることは言わなかったのでしょう。
それが正しかったのか、否かは、よくわかりませんが、それぞれ、メリット・デメリットはあると思います。
この記事を読んでわかること
- 病気のことを周囲に隠すことのメリット・デメリット
- 病気のことを周囲に知らせることのメリット・デメリット
- 病気のことを知らせておくべき人について
難しい問題かもしれませんが、考察してゆきます。
がんである母親をケアしてきた、いわば、患者の支援者の視点から記事を書いていきます
がんだった私の母親はこうしてきた
私の母親は、がんであることを、近所の方や友人のほとんどの人に隠していたようです。
しかし、友人の中でもがんであることを知らせている人もいました。こうした人でした。
- 息子さんをがんで亡くした方
- 病室で知り合った同じような病気と闘っている人
以上の方々は、がんに対する理解があり、信頼できる人だったのだと思います。
一方、親戚にも、母は自分ががんであることを伝えていました。ただし、次のようなこともありました。
すなわち、
- 症状がひどくなっていることを、祖父母(母の親)になかなか伝えられずにいた。
- がんになった当初、当時、小学生の私の弟(母からすると息子)に、自身の症状を伝えるかどうかで迷っていた。
母は、ほぼ寝たきりになってから、祖父母に自分の症状のことを話していました。
とりわけ、祖母は、かなり心配をする人だったので、自分のことをなかなか伝えられていたなったのです。
実際、祖母は、母が病気になった当初、あまりに心配するあまり、いろいろと助けてくれたのですが、そのせいで自分の体調を崩していました。
当時、小学生の弟にもがんのことを伝えるか、迷っていたということも、生前、聞きました。
結局、がんであることを伝えていました。いつまでも、隠し通すことは不可能だと感じたからだったようです。
私の母は、以上のような感じでやってきたようです。しかし、周囲に伝えるか否か、また、誰に伝えるかといった選択肢は、1通りではありません。様々な選択肢がありますので、以下の事柄をご参考ください。
病気のことを周囲に伝えるメリット
まずは、病気のことを周囲に伝えるメリットを考えてゆきます。
メリットはズバリ、
周囲の人が心配してくれる
ことでしょう。
より具体的には、例えば、
- 継続的に連絡をとってくれる
- 何かを相談できる
- 差し入れをくれる
などをあげることができると思います。周囲の人が、気を遣ってくれるのです。
私の母も、一部の人には、がんのことを伝えていましたが、いろいろなこと(家族のこと、家事のこと、仕事のこと、etc.)を心配してくれました。
ケアをする私としても、非常に助かったこともありました。
逆に言うと、病気のことを伝えなければ、心配してくれる人がいないことを意味し、それは、病気のことを周囲に伝えないデメリットです。
しかし、多くの人を心配させるのは、嫌だと思われる方もいらっしゃるかと思います(私の母がそうでした)。
そこで、次に、「病気のことを周囲に伝えないメリット」を見ます。
病気のことを周囲に伝えないメリット
病気のことを周囲に伝えないメリットは、
周囲に心配をかけなくてすむ、知人などが普段通りに接してくれる
ということです。
周囲の人に、病気のことを伝えてしまうと、両者の関係性が変わってくると恐れる方が少なくないと思います。
これまで、普通に接してくれていた人が、急に、かしこまった態度で接するようになるということもあるかもしれません。
そうなると、やはり、病気である人にとっては、むしろ、心配をかけること自体が、大きなストレスになりかねません。
私の母も、病気になる前と変わらない関係性を維持したかったのだと思います(骨肉腫でしたので、障害を負うことにはなったのですが、上手くごまかしていたようです)。
病気のことを周囲に伝えるメリット
周囲の人が心配をしてくれて、気を遣ってくれる。
病気のことを周囲に伝えないメリット
周囲の人に心配をかけず、普段通りの関係性を維持できる。
病気のことを周囲に伝えるか否かに対して、正しい答え(Yes or NO)はありませんので、各自でご判断いただくことになります。
周囲の人との関係性などを、考慮して判断されたら良いかと思います。
ただし、病気のことを周囲に伝えておいたほうがいい人もいます。以下、考えていきます。
病気のことを知らせておくべき人
病気のことを知らせておくべき人を考えます。具体的には、以下の方々だと思います。
- 家族、親戚
- 病気のことを理解してくれそうな信頼できる人
- ケアマネージャー
家族、親戚には、正確に病気のことを知らせておくべきです。急に、病状が悪化したときに、一番に対応するのは、家族や親戚です。
また、病気のことを理解してくれそうなそうな信頼できる人にも知らせておきましょう。
確かに、心配をかけるのが嫌なので知らせたくないという方もいらっしゃるかと思いますが、最低限の心配をかけることは悪いことではないと思います。
むしろ、こうした人に知らせておくことは、心のよりどころをつくることができることを意味し、孤立を避けられるようなメリットがあるのではないかと思います。
繰り返しですが、がんだった母は、がん患者または家族の知人だけに病のことを知らせていました。ピアサポーターの人にだけ、自分の病気や気持ちについてを吐露することもありです。
また、介護が必要なときにお世話になるのが、ケアマネージャーです。ケアマネージャーは、ケアプランをつくってくれます。
ケアマネージャーには、正確に、病気のこと、とりわけ、どのような介護が必要なのか伝えるべきです。さもなければ、自身にとって適切な介護サービスを受けられない可能性があります。
ケアマネージャーには、守秘義務がありますので、何かを知らせることにおいて、心配する必要はありません。
小さな子どもに病気のことを知らせるべきか?
最後に、小さな子どもに病気のことを知らせるべきか考えます。
母ががんであることが分かったとき、私の弟は小学校低学年でした。母は、どうやって、弟に病気のことを知らせるべきか苦悩していました。
私の意見となりますが、子どもが病気について理解できる年齢(小学生)以上であれば、病気のことをわかりやすく知らせるべきだと思います。
子どもが小学生以下でも、できる限り説明すべきです。
子どもは、親のことをとても観察しています。何か異常があれば、すぐに、察知します。
病気になると、自分の体調に明らかな変化がありますし、通院も増えます。子どもも心配をすることになります。
こうしたことを勘案すると、正直に、子どもに病気のことを知らせておくべきでしょう。
死についても、子どもに、教えておいたほうがいいと思います。もちろん、子どもにとっては、肉親が死ぬことに辛さを覚えるかと思いますが、何も言わずに肉親が死んでいくと、もっと、辛い気持ちになると思います。また、生きることはどういうことなのかを学ぶことにもつながります。
最後に
今回、あくまで、病気である母をケアしてきた身より、記事を書いてきました。
しかし、人間は誰でも、病気にかかり、死にます(ただし、老衰は病気ではない)。
死に関わる病気にかかったとき、どうするのか、病気のことを周囲に伝えるべきなのか、「次は我が身」と思い、若いころから考えておくべきだと思います。