私の母親はがんを患って、要介護認定を受けました。認定を受けたのは40代。
母は2021年に他界しましたが、40歳~64歳であれば、がんでも介護保険を利用できる可能性があるのです。
介護認定を受けると、原則1割の負担で、例えば、ヘルパーさんに来てもらえたり、介護用ベッドをレンタルしたりするということができるようになります。
そもそも、介護保険は、65歳以上の方しか使えないと思われている方もいらっしゃるでしょう。
しかし、40歳~64歳でも介護保険を利用できる場合があるのです。
がんの場合は、回復の見込みがない場合といったことが定められていますが、ひとまず、介護保険においてがんがどのような位置づけがなされているのか見てまいりましょう。
この記事を見てわかること
- 介護保険におけるがんの位置づけ
- がん患者が介護保険を使うメリット
- がんの母を介護してきた当サイト管理人の経験
がん患者の当事者の皆さま、ご家族の皆さまに対して、できる限りわかりやすく記してまいります。
65歳未満も介護保険を使えるの?
まず、最初に、介護保険の基本的なところから述べていくことにします。
介護保険といえば、65歳以上が対象で、それより下の年代の者は、保険料を支払うだけだと思われている方もいらっしゃるでしょう。
しかし、65歳未満でも介護保険を使える場合があるのです。
第1号被保険者と第2号被保険者
介護保険の被保険者(介護保険の給付を受けられる人)は、第1号被保険者と第2号被保険者に分けられています。
被保険者の違い
- 第1号被保険者
→65歳以上の者
- 第2号被保険者
→40歳以上65歳未満の医療保険加入者
したがって、40歳以上65歳未満は、第2号被保険者ですので、介護保険を利用できる場合があるのです。
ただし、健保組合、全国健康保険協会、市町村国保などの公的医療保険に加入していることが条件です。
というのも、介護保険料は健康保険料と一体的に徴収されるからです。
介護保険料を支払っていれば、40歳以上65歳未満の第2号被保険者として適用されることになります。
40歳未満は対象外
逆に言うと、40歳未満は介護保険の対象外となります。
介護保険料の支払いも40歳から始まりますので、当然と言えば当然でしょう。
ただ、40歳未満でも介護が必要が状態になることがあります。
そのような場合は、別の制度が利用できる場合があります。
例えば、障害があれば障害福祉サービスを使えますし、自治体が独自の制度を整備している場合もあります。
介護保険は、加齢・老化の進行によって介護を行うという考え方より、第2号被保険者の場合は、特定疾病のみが対象となります。
次に、特定疾病について詳しく見ていきます。
がんは特定疾病だが…
40歳から65歳未満の第2号被保険者が介護保険を利用する場合、特定疾病であることが条件となります。
がんは特定疾病として認められているので、40歳~64歳でも介護保険を利用できます。
特定疾病とは、簡単に言うと、加齢・老化によって生じる病気のことです。
では、特定疾病について見ていきます。
16の特定疾病
厚生労働省は、16の疾病を特定疾病として認めています。16の特定疾病は以下の通りです。
- がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。)
- 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靱帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
【パーキンソン病関連疾患】 - 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
以上、厚生労働省のホームページ「特定疾病の選定基準の考え方」より引用いたしました。
一番最初にがんについて書かれています。ただし、但し書きが書かれていることに留意する必要があります。
がん患者全員が利用できるわけではない
40歳~64歳のがん患者全員が介護保険を利用できるわけではありません。
特定疾病として認められるのは、「医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る」のです。
回復の見込みがないがんであれば、介護保険を利用できる可能性が高いといえます。
ただ、回復の見込みがないがん=末期がん=亡くなる直前のみ、というわけではありません。
がんを完治するのは厳しいため、緩和の方向で治療をしているといった事例であれば、介護保険を利用できる可能性があります。
介護保険の申請するには、いずれにせよ、主治医の意見書が必要となりますので、現時点の状態で介護保険を申請できるかどうかは、主治医の方と相談してみてください。
- 介護保険は、40歳以上65歳未満の第2号被保険者の場合、特定疾病であれば利用できます。
- がんも特定疾病となりますが、回復の見込みがない状態である必要があります。
なお、かつては、末期がんでないと介護保険を申請できなかったのです。その点を次に述べますが、読み飛ばしていただいて問題ありません。
【参考】”末期がん”の文言について
実は、がんが特定疾病になったのは2010年です。15の疾病にがんが追加され、特定疾病は16の疾病となりました。
しかし、特定疾病として認められたのは、末期がんでした。当時の資料を見ると、「がん【がん末期】」と記されていました。
主治医意見書にも、末期がんであることが明示される必要があったのです。
ただ、医療者から、意見書に「末期がん」と記しづらいという懸念が出されました。
そこで、2019年2月、「【末期がん】」という文言が削除されたのです。
したがって、現在は、末期がんでなくても、介護保険を利用できます。
利用できる範囲が以前より広がったといえます。もちろん、末期がんの方でも介護保険を利用できます。
介護サービスを利用する場合は積極利用を
介護サービスを利用する場合は、介護保険を積極的に利用しましょう。
というのも、介護保険を利用すると、自己負担が原則1割で済むからです(例外あり)。
例えば、がん治療が困難な状態になってしまい、生活に支障が出る場合は、ぜひ、介護保険を利用しましょう。
介護用品を1割でレンタルできたり購入できたりします。
また、反対に、がん治療が苦しく、普段通りに家事をこなせなくなったというときも、介護保険を活用できるかもしれません。
ヘルパーさんが来てもらえるかもしれません。
介護保険申請の流れ
大雑把に、介護保険申請の流れを記します。
- 市区町村の窓口で要介護認定の申請をする。
- 認定調査を受ける。主治医意見書の作成を依頼する。
- 要介護認定完了
この後は、ケアプラン作成などを経て、介護サービスの利用が始まります
※介護保険の申請の流れは、別記事で紹介する予定です。
経験談となりますが、がんの場合、病状が急激に悪化する場合があります。その際は、区分変更申請をするようにしてください。要介護度が上がり、より多くの介護サービスを利用できる可能性があります。
私の身内(がん患者)の場合
私の母は、足の骨肉腫(骨のがん)ということもあり、早期に介護保険を申請していました。
というのも、骨肉腫の手術後、片足が不自由になってしまったからです。初期はつえで、がんが進行してくると車いすで生活をしていました。
母は要支援2から始まり、最終的には、要介護3になりました。
介護保険を用いて、住宅改修や介護用ベッドのレンタルなどをしました。その際、ケアマネージャーにはお世話になりました。
要介護度に応じて、受けられる介護サービスやその量が異なります。当然、要介護度が高いほど、介護サービスの種類、量ともに豊富になります。
まとめ
40歳以上65歳未満のがん患者の皆さま、介護保険を利用できる場合があります。積極的に検討してください。
介護保険を利用するにあたり、最も大変なのが申請です。給付管理などは、ケアマネさんがやってくれます。
介護保険を利用できると、がん患者の生活が楽になることもあります。私の母も、介護保険の恩恵を受けていました。
申請は面倒かもしれませんが、ご家族の皆さまも含めまして、ぜひ、積極的に、介護保険の利用を検討してください。