遺骨には、六価クロムという有害物質が含まれていることがあります。
国際がん研究機関(IARC)は、人に対して発がん性がある物質をグループ1として扱っていますが、六価クロムはグループ1に分類されます。
IARCの分類は、グループ1、グループ2A、グループ2B、グループ3、グループ4に分かれますが、最も発がん性が高い物質が分類されるのがグループ1です。
また、六価クロムを触れてしまうと皮膚炎や腫瘍を引き起こす可能性がありますし、吸い込んでしまいますと鼻中隔穿孔を引き起こす可能性があります。
とはいえ、六価クロムは、気化するわけではないので、過度に心配をする必要もありません。
例えば、自宅に、骨壺に入った焼骨を安置する場合は、特段、六価クロムについて気にする必要はありません。
一方で、六価クロムは、水に溶けやすいという特徴があります。そのため、散骨をする場合は、注意が必要です。
散骨をする場合は、還元剤を用いて、六価クロムの無害化処理を施すことが求められます。
以下、詳しく見てまいります。
遺骨と六価クロム
遺骨には六価クロムが含まれている、、、と聞いたことがあるけれど、真相はどうなの??
このように思われる方は、少なくないと思います。
そこで、まずは、遺骨と六価クロムの関係について述べてまいります。
先に、六価クロムの危険性について述べることにします。
六価クロムの危険性
化学を学んだことがある方ならば、六価クロムは、クロム(原子番号24の元素)の化合物のうち、酸化数が +6 のものの総称であるという説明で、ある程度、どんな物質なのか理解をできるかと思います。
しかし、ここで注目をしたいのは、六価クロムの危険性についてです。
六価クロムには、強い酸化作用があるため、六価クロムに触れると、皮膚炎や腫瘍を引き起こす可能性があります。
また、六価クロムを含む液体を飲むと嘔吐、六価クロムを含む粉末を吸い込むと鼻中隔穿孔を引き起こす可能性があります。
ここまでの説明で、六価クロムは危険な有害物質であると認識されると思いますが、危険な要素はまだあります。
さらに、六価クロムは、発がん性もあります。
国際がん研究機関(IARC)は、六価クロムを「人に対して発がん性がある物質」としてグループ1に分類しています(グループ1は、最も発がん性のある物質が分類されます)。
大量に肺に吸い込んでしまいますと肺がんにつながるリスクがありますし、消化器系の臓器にもがんを引き起こすリスクがあります。
以上より、六価クロムの扱いについては、法律で非常に厳しく規制されています。
遺骨に六価クロムが含まれることがある
以上のように、六価クロムは危険な有害物質でありますが、こうした六価クロムが火葬後の遺骨(焼骨)に含まていることが多くあります。
では、なぜ、遺骨に六価クロムが含まれることがあるのでか。その原因は、火葬です。
多くの火葬場の炉の内部には、棺桶をのせる耐熱ステンレス製の台があります。
そのステンレスの台が高温にさらされると、ステンレスに含まれているクロム成分が化学反応を起こして、六価クロムが生成され、遺骨にも含まれることがあるのです。
ただし、近年は、火葬場において、クロムを含まない台を採用しているところもあります。また、集塵灰中に集積され、大気へ放出することによって、遺骨への六価クロムの付着を防いでいます。
そのため、必ずしも、遺骨において、土壌汚染対策法で定められた「0.05mg/L」を超える六価クロムが検出されるわけではありません。
近年は、遺骨に六価クロムが含まれないように対策をしている火葬場もあるため、遺骨には六価クロムが「絶対に」含まれると断言することはできません。
六価クロムの無害化処理をすべきか
六価クロムは、強い酸化作用があると前述しました。そのため、還元をすることによって、六価クロムを無毒である三価クロムに変化させることができます。
還元をすることによって、六価クロムは、無害化することができるのです。
したがって、、、
遺骨には六価クロムが含まれることがあるから、必ず、六価クロムの無害化処理を施したほうがいいのかな?
と思われる方もいらっしゃるでしょう。
こうした疑問についてお答えすると、六価クロムは、気化するわけではないので、必ず、遺骨において六価クロムの無害化処理をする必要はありません。
例えば、骨壺に入った焼骨を安置する場合、六価クロムの無害化は不要といってよいでしょう(ただし、焼骨に触れることは避けましょう)。
遺骨は、可能な限り、自然な形で残しておきたいという気持ちの方が多いでしょう。遺骨の六価クロムを無害化するには、液剤(還元剤)を用いるので、これについて違和感を覚える方もいらっしゃるでしょう。
一方で、必ず、遺骨において、六価クロムの無害化処理をせねばならない場合があります。下記、詳述します。
散骨をする場合は必須
散骨をする場合は、遺骨の六価クロムの無害化処理を必ず施すようにしましょう。
というのも、六価クロムは、水に溶けやすい性質があるからです。
例えば、海洋散骨は、海に遺骨を撒くこととなります。仮に、遺骨に六価クロムが含まれていた場合、無害化をしていなければ、海に六価クロムが溶け出してしまいます。
また、山林に散骨をする場合も、遺骨が、雨に濡れると、同じく、六価クロムが流出してしまいます。
六価クロムは水に溶けやすいため、散骨をする場合は、必ず、遺骨に含まれる六価クロムを無害化する必要があります。
とはいえ、散骨をする場合、自ら、還元剤を購入して、遺骨にかけて、処理をする必要はありません。
粉骨は、多くの場合、業者に依頼をして、行ってもらうのが普通です。また、海洋散骨をする場合は、粉骨も業者のプランに含まれています。
専門業者は、遺骨に、六価クロムが含まれることがあることは、当然ながら知っています。
業者は、粉骨をするときに、環境基準以上の六価クロムが検出された場合、しっかりと、六価クロムの無害化処理を施しています。
散骨をする場合は、遺骨に含まれている六価クロムを無害化する必要があるということは覚えておきましょう。
無害化処理の方法とは
一般的な六価クロムの無害化の方法を簡単に述べておきます。
六価クロムを三価クロムにして無害化するには、専用の還元剤を用います(モノタロウで売っておりますので、一般の方も入手可能です)。
遺骨に、還元剤を噴霧することによって、六価クロムが三価クロムになり、無害化されます。
粉骨をする前に、無害化処理をするのが普通です。
関連記事「自分で散骨をするのは可能?散骨をできる場所や注意点とは」(内部リンク)
散骨のイメージを低下させないために
散骨をする場合は、遺骨に含まれる六価クロムの無害化処理を必ず行うべきだということを述べてきました。六価クロムは、水に溶けやすいからです。
例えば、仮に、六価クロムの無害化処理をせずに海洋散骨をすると、六価クロムが流出して、環境に悪影響を与えることになります。
確かに、散骨をする場合は、遺骨に含まれる六価クロムの無害化が法律などで義務付けられているわけではありません。
そのため、自分の利益のためならば、環境汚染などどうでもよいと考える悪徳業者がいるかもしれません。
しかしながら、日本において散骨に対する理解は深まっていないのが現状です。
世間において、散骨は六価クロムの海洋汚染を引き起こしているというイメージがついてしまったら、散骨への規制はより強化されることは間違いないでしょう。
散骨のイメージを低下させないためにも、環境への対策は、可能な限りで施す必要があるのです。そして、その一つが、六価クロムの無害化処理です。
散骨をする場合は、遺骨に含まれる六価クロムの無害化処理を必ず行う必要があります。